Ki-No-Otonai

vol.21

大雪

Taisetsu

2024.12.7 ― 12.20

雪よ来い、
霰よ来い

「大雪(たいせつ)」とは
雪が多く降りはじめる時期のこと。
冷え込みも深まり、いよいよ冬本番となります。
忙しい師走の日々、寒さには充分対策をして
年の瀬に向けて健やかに歩んでいきたいもの
です。

雪と人がつくる
冬景色がある。

大雪の初候は、「閉塞成冬(そらさむくふゆとなる)」といい、
重い雲で空が閉ざされ、本格的な冬が到来するという意味です。
山々はすっかり雪化粧に、平野部でも各地で初雪の知らせが届きはじめます。
動物たちは長い眠りにつき、
人々は歳末に向け師走の活気に満ちた日々を駆けていく。
その吐きだされる白い息はやがて雲となり、
明日の雪をつくりだすのかもしれません。

降雪の多い地域では、雪の重みで庭園などの木々の枝が折れないよう「雪吊り」が施されます。
雪吊りは雪囲い、冬囲いとも呼ばれ、特に豪雪地帯の日本海側に見られる冬の風物詩です。
熟練の庭師たちが柱を立て、放射状に縄を張る。
その技は古くから地域で発達し、職人たちに受け継がれてきました。
庭師にはそれぞれ流儀のようなものがあり、頂上部分の縄の結わきかたを見れば、どの系列の職人なのかがわかるそうです。
四季に美しい庭園の、冬だけにみられる美しい技。
雪のなかで鑑賞してみたいものです。

降り落ち、
敷き詰められた霰が、
模様の名に。

「雪やこんこ、霰やこんこ」と童謡にもあるように、この時季冷え込んでくると、雪とともに霰(あられ)が降ることがあります。
氷の粒の直径が5mm未満のものを霰、5mm以上のものを雹(ひょう)と呼ぶそうです。
むかしの人は、ぱらぱらと音を立てて降る氷の小さな粒を美しいと感じ取ったのでしょう、「玉霰」という美称をつけました。
それはこの時季の季語になっています。

豊国,国久『第六天神』,ト山口,安政5.(一部を表示)
出典:国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/1311395

日本の伝統模様の中に、霰の名がついた模様があるのをご存知ですか。
一般的に「市松模様」の名で知られる桝目状の模様は、その源流をたどると奈良時代、正倉院の宝物にもなった織物の地紋に見られます。
平安時代には公家の有職文様に取り入れられ、「霰文(あられもん)」と呼ばれました。
その後広くは「石畳文」とも呼ばれ、時代をこえて受け継がれていきます。
そして江戸時代、歌舞伎役者の佐野川市松が石畳文の袴を着用したことから市松模様と呼ばれるようになりました。
その人気ぶりは当時の浮世絵をみればわかります。
人々がこぞって佐野川市松のようにありたいと願ったのでしょうか、市松模様の着物の人物画が江戸中期以降、とても多くみられるのです。

伝統のかたちに新しい風を。

碁盤の目状に並んだ枡を、交互に濃淡や色で違いをつけていく市松模様。
その表現のしかたは、長い日本の文化史をみても実に多種多様なものがみられます。
日本の伝統模様を取り入れる印傳屋も独自の市松模様を創出。
交互に配する桝目には、霰のような点の配置のしかたで違いを出し、市松のようにみせています。
古くからあるかたちを受け継ぐだけでなく、変化をつけ自由に新たなかたちを生み出していく。
印傳屋の伝統はそうして進んでゆきます。

「変わり市松」模様の印伝

F小銭入12[黒地/黒漆]
10,230円(税込)
札入C[紺地/黒漆]
12,100円(税込)
札入F[紺地/黒漆]
18,150円(税込)
札入A[紺地/黒漆]
SOLD OUT
札入N[黒地/黒漆]
18,150円(税込)
キーケースB[紺地/黒漆]
SOLD OUT

「変わり市松」模様の印伝は、形や色の組み合わせがさまざま。上記以外の商品については、印傳屋直営店へお問い合わせください。

季の訪い
季の訪い

頰を撫でるそよ風に、
ふと見た野辺の草花に、季節を知る。
あめつちの間で、ひとは千年以上も前から
季の趣を細やかにとらえ、
風物や自然の恵みを愛おしんできました。
一日一日を過ごす時の流れは、
むかしほど緩やかではない
かもしれませんが、
その感性は今も誰の心にもあるものです。

季節の移ろいと、そこに寄り添い
生きてきた
日本の暮らしと文化をなぞり、
日本人のひとつの感性として
生み出してきた印伝とともに
二十四の季をみなさまと
めぐってまいりたいと思います。