Ki-No-Otonai

vol.2

雨水

Usui

2024.2.19 ― 3.4

水が動き
はじめる頃に

「雨水(うすい)」とは、降る雪が雨になり、
雪解けがはじまる頃をいいます。
山から雪解け水が流れ出し、
田畑を潤す雨水の時季は、
むかしから農耕の準備をはじめる
目安とされてきました。
冬の静から、春の動へ。
自然の鼓動が人を揺り起こします。

季節をつぶさに感じ、
生まれた春の言葉。

七十二候では雨水の次侯を
「霞始靆(かすみはじめてたなびく)」といいます。
雨や雪解け水の水蒸気、塵などで
この季節は空に霞がかかる日が多くなります。
「春霞」は季語になっており、朝霞や夕霞、薄霞、
遠霞、八重霞などの言葉も生まれました。
夜に霞がかかっていても、それは霞とはいわず、
「朧(おぼろ)」と呼ぶのだそうです。
その時々にふさわしい形容のしかたがある日本語は、
あらためて美しいものだと思い直しました。
今は、どんな霞がたなびいているでしょうか。

雨水の末侯は「草木萌動(そうもくめばえいずる)」といい、
その名の通り、草も木も芽を出しはじめる頃です。
二月の異名も「木の芽月」で、
この季節を「木の芽時」ともいいます。
この頃に吹く風は「木の芽風」、
雨が降ったら「木の芽雨」、晴れれば「木の芽晴れ」。
むかしの人々が、まだ寒さの残るなかで春の芽吹きを待ちわび、
小さな生命の膨らみを愛おしく思っていたからこそ、
そのような言葉が生まれていったのでしょう。

良縁を願う心は、
むかしも今も。

雨水の末、三月三日は桃の節句、雛祭りです。
雛人形は立春から雨水の頃に飾るものとされ、
雨水の日を選ぶと良縁に恵まれるといわれています。
現在でも地域によっては
「流し雛」の行事が行われているように、
もともとは人形(ひとがた)に厄を移して水に流す風習でした。
そのため、水が豊かになる雨水と結びつけ、
雛飾りに縁起のよい日としたのでしょう。

豊国 , 国久『湯島天神』, 辻安 , 安政4.(一部を表示)
出典:国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/1311384

縁起を担ぐのが好きなこの国の人々。
良縁といえば、「七宝(しっぽう)」の模様が挙げられます。
錦絵の藍の着物に描かれた、円を重ねあわせてつくられた模様です。
七宝は平安時代の有職文様で、
輪が「四方」「十方」(じっぽう)に繋がり広がるさまから、
ご縁や円満などを表す吉祥文様として受け継がれてきました。
本来は金、銀、瑠璃(るり)、玻璃(はり)など
仏教における七種の宝を指すもの。
人とのご縁や繋がりも、七種の宝と同じように
貴重であることからその呼び名になったといわれています。
さてさて、七宝の女性は恋文をしたためて、
その後、縁が結ばれたのでしょうか。

悠久の時を流れて受け継がれる「七宝」の模様。

円の重なりによる幾何学模様は古代エジプトにも見られ、
シルクロードを経て奈良時代に日本に伝わったとされています。
以来、七宝は吉祥文様としてさまざまな工芸に表され、
日本の伝統模様を受け継ぐ印傳屋も独自の七宝模様を印伝に表し、
その由縁とともに、今に伝えています。

「七宝繋ぎ」模様の印伝

F小銭入01[紺地/白漆]
SOLD OUT
F小銭入11 [紺地/白漆]
SOLD OUT
札入S[紺地/黒漆]
SOLD OUT
束入T[黒地/黒漆]
SOLD OUT
9ポーチ[黒地/黒漆]
SOLD OUT
ペンケースA [紺地/白漆]
SOLD OUT
47ショルダー[黒地/黒漆]
SOLD OUT
73手提[紺地/グレー漆]
SOLD OUT
F小銭入01[紺地/白漆]
SOLD OUT
F小銭入11 [紺地/白漆]
SOLD OUT
72H小銭入[黒地/黒漆]
3,960円(税込)
札入S[紺地/黒漆]
SOLD OUT
束入I[紺地/黒漆]
20,350円(税込)
札入N[紺地/黒漆]
18,150円(税込)
束入T[黒地/黒漆]
SOLD OUT
9ポーチ[黒地/黒漆]
SOLD OUT
ペンケースA [紺地/白漆]
SOLD OUT
スマホポシェット[紺地/黒漆]
15,400円(税込)
47ショルダー[黒地/黒漆]
SOLD OUT
73手提[紺地/グレー漆]
SOLD OUT

「七宝繋ぎ」模様の印伝は、形や色の組み合わせがさまざま。上記以外の商品については、印傳屋直営店へお問い合わせください。

季の訪い
季の訪い

頰を撫でるそよ風に、
ふと見た野辺の草花に、季節を知る。
あめつちの間で、ひとは千年以上も前から
季の趣を細やかにとらえ、
風物や自然の恵みを愛おしんできました。
一日一日を過ごす時の流れは、
むかしほど緩やかではない
かもしれませんが、
その感性は今も誰の心にもあるものです。

季節の移ろいと、そこに寄り添い
生きてきた
日本の暮らしと文化をなぞり、
日本人のひとつの感性として
生み出してきた印伝とともに
二十四の季をみなさまと
めぐってまいりたいと思います。