Ki-No-Otonai

vol.23

小寒

Shōkan

2025.1.5 ― 1.19

一年のはじまりに願う

「小寒」を迎え、いよいよ寒の入り。
この日から節分までのひと月は「寒の内」といい、
一年で最も寒い時期です。
正月休みでなまった身体も、
凍てつくような寒さでぐっと引き締まります。
さあ、清新な気持ちで、
ことしの仕事はじめとまいりましょう。

この年の無病息災を願う。
今に続く正月の風習。

正月七日といえば「七草粥」。
新春の若菜の生命力にあやかり、七草を入れた粥を食べ邪気を払い、一年の無病息災を祈ります。
この風習は古くは平安時代よりはじまり、江戸時代に広まったそうです。
今では正月のご馳走で疲れた胃腸を休ませる意味合いが含まれるようになりました。
さて、この七種類を全部言えますか? 「芹(せり)、薺(なずな)、御形(ごぎょう)、 繁縷(はこべら)、仏座(ほとけのざ)、菘(すずな)、蘿蔔(すずしろ)、これぞ七草」
短歌のようになっているので、覚えやすいですね。

正月十一日は「鏡開き」。
お供えした鏡餅を下げて、お汁粉やお雑煮にして食べ歳神様に無病息災を願う行事です。
まずは硬い餅を細かくしなければいけませんが、武家では切腹を連想させるので「切る」ことをせず、槌(つち)で割るようにしました。
それでも「割る」という言い方も避け、運気が開けるように「開く」という表現を使いました。
ちなみに、割ってできた餅のかけらを「欠き餅」といい、これを焼いたり揚げたりしたのが「おかき」。
ふだん食べる「おかき」は、実は鏡開きに由来があったのですね。

祈りをこめる行事は、
ずっとこれからも。

一月十五日は小正月。
歳神様をお迎えする元日の「大正月」に対し、旧暦で満月となる十五日は「小正月」としてさまざまな行事が行われます。
小豆粥を食べて無病息災を願うほか、松飾りやしめ縄、前年のお札やお守り、熊手などの縁起物に感謝を捧げて燃やし、家内安全や無病息災を祈願するのが一般的。
その呼び名は「左義長(さぎちょう)」「どんど焼き」「どんと焼き」「鬼火たき」など全国各地で異なります。
また、その火で焼いた餅を食べると無病息災に過ごせる、煙に当たると健康になる、その灰を家の周囲にまくと魔除けになる、などさまざまな言い伝えが各地で受け継がれています。

小正月には「餅花」の飾りもよく見られます。
これは、紅白やとりどりに色付けした餅を小さくちぎって丸め、柳などの枝に花が咲いたように飾って五穀豊穣を祈るものです。
地域によっては、左義長の際に餅花の飾りも一緒に焼いて食べるとその年は無病息災で過ごせるといわれています。
寒さで花の少ない時期に餅花の飾りを見ると、まるで春が訪れたかのようです。
このことから、小正月は「花正月」とも呼ばれています。

厄除け、魔除けの象徴「鱗」。

人々は年のはじまりに、家族が健やかに安全に過ごせるように願ってきました。
厄除けもこの時期に行われますが、災いや病で苦しむことのないようふだんから魔除けになるものを身につける風習が古くから伝わっています。
そのひとつが「鱗(うろこ)」の模様。
鎌倉時代、北条時政が江ノ島に参籠した際、目の前に龍神が現れ三枚の鱗を残したことから、これを守護神として家紋にしました。
もともと、古代より三角の連続模様は悪霊を退けるものとされており、「北条鱗」と相まって、魔除け・厄除けの印として広まりました。
現在も女性の厄年には鱗模様の長襦袢を着る習慣が残っています。
いつも手にするものにも、龍神の力を。
その想いから、鱗模様を取り入れた印伝を今もつくり続けています。

「波鱗」模様の印伝

F小銭入12[黒地/グレー漆]
10,230円(税込)
札入J[紺地/白漆]
14,850円(税込)
札入A[黒地/白漆]
25,300円(税込)
名刺入[紺地/白漆]
7,700円(税込)
合切袋(大)マチ付[黒地/白漆]
24,200円(税込)
230合切袋マチ付[紺地/白漆]
30,800円(税込)

「波鱗」模様の印伝は、形や色の組み合わせがさまざま。上記以外の商品については、印傳屋直営店へお問い合わせください。

季の訪い
季の訪い

頰を撫でるそよ風に、
ふと見た野辺の草花に、季節を知る。
あめつちの間で、ひとは千年以上も前から
季の趣を細やかにとらえ、
風物や自然の恵みを愛おしんできました。
一日一日を過ごす時の流れは、
むかしほど緩やかではない
かもしれませんが、
その感性は今も誰の心にもあるものです。

季節の移ろいと、そこに寄り添い
生きてきた
日本の暮らしと文化をなぞり、
日本人のひとつの感性として
生み出してきた印伝とともに
二十四の季をみなさまと
めぐってまいりたいと思います。