Ki-No-Otonai

vol.7

立夏

Rikka

2024.5.5 ― 5.19

緑薫る
風に吹かれて

夏の気が立つ「立夏」。
暦の上ではこの日から立秋までが夏です。
初夏の清々しい風に吹かれ、
青葉が眩しく見えます。
爽やかな陽気に、
外へ出かけようと思い立つ季節です。

五感で感じたい
初夏の愉しみ。

新緑のこの季節を「若葉時(わかばどき)」といいます。
時候の挨拶にみられる「薫風」「風薫る」とは、
若葉のみずみずしい木立を吹き抜ける風。
その字面を見るだけでも爽やかな薫りが漂うのを感じます。
風に誘われるまま、緑の世界に身を置いてみる。
そうして鳥や虫たちと同じように、初夏の訪れを心から愉しみましょう。

立夏の末候は「竹笋生(たけのこしょうず)」。
春の筍は孟宗竹(もうそうちく)で、初夏から出てくるのは淡竹(はちく)と真竹(まだけ)です。
次々に現れる竹の子どもたちの生長はとても早いもの。
一旬(十日)で大人の竹になることから、竹冠に「旬」と書いて「筍」という字になったといわれています。
由来はさておき、この旬の美味しさをどう愉しみましょうか。
そのまま焼いたり、若芽とあわせて若竹煮にしたり、炊き込みご飯も捨てがたいですね。

一陽斎豊国『風流役者地顔五節句 五月之図』(一部を表示)
出典:国立国会図書館デジタルコレクション  https://dl.ndl.go.jp/pid/1308621

菖蒲で厄を払い、
男子の成長を願う。

五月五日は五節句のひとつ「端午の節句」です。
古くは奈良時代に宮中の行事としてはじまり、武士が台頭する時代になると男子の成長を願う行事として発展し、武家では競馬や騎射が行われ、鎧兜が飾られるようになりました。
それが江戸時代になると庶民の間にも取り入れられ、飾り兜や金太郎、桃太郎、牛若丸などの人形を飾るようになりました。

端午の節句には「菖蒲(しょうぶ)」がつきもの。
菖蒲の葉は強い香気をもち、形が刀に似ていることから邪気を祓うとされ、武道を尊ぶ「尚武」に通じるため武家に取り入れられました。
これも兜飾りと同じように庶民にも広まり、菖蒲を軒に吊るしたり、木刀の柄を菖蒲の葉で巻き彩色した「菖蒲刀(しょうぶがたな)」を飾りました。
菖蒲湯に入って無病息災を願うのは、現代にも伝わる風習ですね。

勝負に挑む人のための模様。

武士の尚武の精神に通じるとされた菖蒲。
その模様は、古くは平安時代の鎧兜を彩る装飾革にみられます。
端午の節句の風習とともに、武家に好まれた菖蒲の模様は時代をこえて受け継がれてきました。
現代においても、武道に限らず、さまざまな勝負に挑む人のために、印傳屋は菖蒲模様の印伝を伝え続けています。

「菖蒲」模様の印伝

F小銭入02[黒地/白漆]
2,530円(税込)
F小銭入02[紺地/白漆]
2,530円(税込)
札入J[黒地/白漆]
14,850円(税込)
札入J[紺地/白漆]
14,850円(税込)
束入M[黒地/白漆]
22,000円(税込)
束入M[紺地/白漆]
22,000円(税込)
名刺入[黒地/白漆]
7,700円(税込)
名刺入[紺地/白漆]
7,700円(税込)
合切袋(大)マチ付[黒地/白漆]
24,200円(税込)
合切袋(大)マチ付[紺地/白漆]
24,200円(税込)

「菖蒲」模様は、革新をつづける印伝の歩みの中で未来につないでゆきたい大切なもの。立夏の特集にあわせ、季節限定で復刻いたしました。

季の訪い
季の訪い

頰を撫でるそよ風に、
ふと見た野辺の草花に、季節を知る。
あめつちの間で、ひとは千年以上も前から
季の趣を細やかにとらえ、
風物や自然の恵みを愛おしんできました。
一日一日を過ごす時の流れは、
むかしほど緩やかではない
かもしれませんが、
その感性は今も誰の心にもあるものです。

季節の移ろいと、そこに寄り添い
生きてきた
日本の暮らしと文化をなぞり、
日本人のひとつの感性として
生み出してきた印伝とともに
二十四の季をみなさまと
めぐってまいりたいと思います。