Ki-No-Otonai

vol.1

立春

Risshun

2025.2.3 ― 2.17

春の気を探しに

暦の上では、「春の気立つ」
立春から春のはじまり。
まだまだ続く寒い日に、
どこが春なのかと言いたくなりますが
野の木々をよく見れば、芽吹くものがちらほらと。
一歩一歩、春は確かに近づいています。

とけて現れる春。

二月は「如月(きさらぎ)」といい、「衣更着」とも書きます。
衣を更に重ねるほどの寒さですが、
微かな春の気配が徐々に現れる頃でもあります。
一年を二十四の季節に分けた二十四節気。
これをさらに初侯、次侯、末侯と三つに分けた七十二候では、
立春の初侯を「東風解凍(はるかぜこおりをとく)」といいます。
その名の通り、東風が氷をとかしはじめる頃です。
とけるにつれ、うごめく生命たち。
外へ出て、春の気配を探したくなりました。

広重『花鳥錦絵〈梅に鶯〉』(一部を表示)
出典:国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/1309733

立春の次侯は「黄鶯睍睆(うぐいすなく)」。
南の方ではもう二月あたりから「ホーホケキョ」が
聞かれるようになりますが、みなさまの周りではいかがでしょう。
その季節に初めて聞く鳥や虫の鳴き声を「初音」といい、
特に春の鶯を指します。源氏物語には「初音の巻」として、
その声を心待ちにする歌が収められています。
「年月を まつにひかれて 経る人に きょううぐいすの 初音きかせよ」
春の声を待ちわびる心は、むかしも今も同じ。
鶯の異名は「春告鳥」とも。告げられる日が楽しみですね。

馥郁ふくいくとした香りで
春を告げる「梅」。

春告鳥が鶯なら、「春告花」は梅です。
まだ寒さ厳しい新春から咲きはじめる梅は「百花のさきがけ」と呼ばれ、
奈良時代では花といえば梅を指したそうです。
穏やかに漂う上品な芳香と清楚な姿が愛され、
梅は万葉集では秋の萩に次いで二番目に多く詠まれています。
貴族や歌人たちは春になると観梅の宴を開き、
その香りに酔いしれていました。

広重『東都名所 亀戸梅屋舗ノ図 』
出典:国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/1303477

二月には「梅見月」という異名もあります。
江戸時代、花見は一年で最も楽しみなイベントのひとつでした。
「梅に始まり菊に終わる」という言葉の通り、
早春はまず梅の名所へ。
待ちわびた春の訪れを感じようと、
人々は一日中その香りに包まれながら梅見を愉しみました。
江戸には梅の名所がいくつもあり、
ガイドブックのような本にはその様子が描かれています。
寒さが残るなかでも堪能する人々の表情からは、
いかに春を心待ちにしていたかが伺えます。

日本の春を語るものを
印伝に。

梅・菊・蘭・竹は高潔で君子の趣があるところから「四君子」とされ、
また松・竹・梅も冬の寒さに耐えることから「歳寒三友」といい、吉祥の画題とされてきました。
絵画や模様、家紋にも用いられ、時代をこえて描かれてきた梅。
日本の春を語る上で欠かせないその模様を、印傳屋も伝統の吉祥文様として印伝に取り入れ、
独自の意匠で今に伝えています。

「梅」模様の印伝

85H小銭入[赤地/白漆]
3,300円(税込)
小銭入G[赤地/白漆]
8,250円(税込)
がま札A[赤地/白漆]
23,100円(税込)
束入Q[赤地/白漆]
24,200円 (税込)
ミニ巾着[赤地/白漆]
1,870円(税込)
4ポーチ[赤地/白漆]
8,470円(税込)

「梅」模様の印伝は、形や色の組み合わせがさまざま。オンラインショップで取り扱いのない商品については、印傳屋直営店へお問い合わせください。

季の訪い
季の訪い

頰を撫でるそよ風に、
ふと見た野辺の草花に、季節を知る。
あめつちの間で、ひとは千年以上も前から
季の趣を細やかにとらえ、
風物や自然の恵みを愛おしんできました。
一日一日を過ごす時の流れは、
むかしほど緩やかではない
かもしれませんが、
その感性は今も誰の心にもあるものです。

季節の移ろいと、そこに寄り添い
生きてきた
日本の暮らしと文化をなぞり、
日本人のひとつの感性として
生み出してきた印伝とともに
二十四の季をみなさまと
めぐってまいりたいと思います。