Ki-No-Otonai

vol.22

冬至

Tōji

2024.12.21 ― 2025.1.4

健やかに
年を越す準備

「冬至」は太陽の高さが最も低くなり、
昼が一番短くなる日。
この日を境に日脚が伸びますが、
寒さはこれから増していきます。
いよいよ年の瀬へ。一年の締めくくりと、
新しい年を迎える準備をしてまいりましょう。

冬至を境に、
よいほうへ、よい年へ。

冬至は「一陽来復(いちようらいふく)」ともいいます。
これは易に由来する語で、一年で最も陰の気が強くなる時期が冬至の頃とされており、これを過ぎると再び陽の気が強くなっていくという意味です。
そこから、よくないことが続いたあとに、
ようやく好運に向かうことのたとえとしても使われます。
年の瀬が近づく今、片付けなければいけないものや心に抱えたものをすっきりさせて、気分よく新たな年を迎えられる準備をしていきたいものです。

冬至といえば柚子湯。
柚子を入れたお風呂に入る風習がはじまったのは江戸時代からといいます。
冬至を「湯治」、柚子を「融通」にかけて「柚子湯に入って融通よくする」という語呂合わせで縁起をかついだ銭湯が催しとしてはじめたというのが通説です。
一年で最も陰の気が強くなる冬至には、香りの強い柚子が邪気払いになるともされていました。
師走も忙しく動きまわる頃、冷えて疲れた身体をぽかぽかにして、いい香りに癒されるひとときをゆっくり愉しんでみませんか。

福をもたらす歳神様を
お迎えする松飾り。

十二月の街中はクリスマスモードですが、二十五日を過ぎるとがらっと変わってお正月モードに。
家々や店先には松飾りが見られるようになります。
松は正月に歳神様をお迎えする目印で依代(よりしろ)となるもの。
その緑は常磐色で千年の齢を保つものとして、また「祀る」に繋がる神聖な木とされていました。
松飾りがはじまったのは平安時代。
宮廷の儀礼でその年の最初の子(ね)の日に、野に出かけて若い松をとり長寿を祈願する「小松引(こまつびき)」という行事がその起源です。
室町時代になると、これも長寿の象徴である竹も若松と一緒に飾られるようになりました。

渓斎英泉『十二ケ月の内 正月 春の遊』,蔦屋吉蔵. (一部を表示)
出典:国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/1304719

松飾りは一般的には二十八日までに、または三十日に飾るのがよいとされています。
二十九日は「九松」といい「苦待つ」とされ、また「二重苦」とも読むことから、この日の設置は忌み嫌われました。
三十一日の大晦日では新年までたった一日しかなく「一夜飾り」となってしまい、歳神様に失礼とされていますので、この日も避けたほうがいいでしょう。
これらは古くから言われてきたことで、私たちも幼い頃に大人からそう聞かされました。
家族の幸せを願い、よい年を迎えるための風習を次の世代にもちゃんと伝えていきたいと思うのでした。

伝統の松の模様を
現代風にデザイン。

松は常磐木と呼ばれた吉祥樹。
平安時代より松を図案化した柄はさまざまな形で生まれ、器や衣服に描かれました。
芽生えた松葉を菱状にした「若松菱」も伝統の吉祥文様のひとつ。
印傳屋はこれを独自にアレンジし、
適度な間隔で配することで遠目からは斜め格子にも見える新しい若松菱を印伝の模様にしています。

「若松菱」模様の印伝

小銭入F[黒地/グレー漆]
6,710円(税込)
札入I[黒地/グレー漆]
13,200円(税込)
札入A[黒地/グレー漆]
25,300円(税込)
名刺入[黒地/グレー漆]
7,700円(税込)
ペンケースD[黒地/グレー漆]
3,960円(税込)
キーケース[黒地/グレー漆]
3,410円(税込)

「若松菱」模様の印伝は、形や色の組み合わせがさまざま。上記以外の商品については、印傳屋直営店へお問い合わせください。

季の訪い
季の訪い

頰を撫でるそよ風に、
ふと見た野辺の草花に、季節を知る。
あめつちの間で、ひとは千年以上も前から
季の趣を細やかにとらえ、
風物や自然の恵みを愛おしんできました。
一日一日を過ごす時の流れは、
むかしほど緩やかではない
かもしれませんが、
その感性は今も誰の心にもあるものです。

季節の移ろいと、そこに寄り添い
生きてきた
日本の暮らしと文化をなぞり、
日本人のひとつの感性として
生み出してきた印伝とともに
二十四の季をみなさまと
めぐってまいりたいと思います。