Ki-No-Otonai

vol.11

小暑

Shōsho

2025.7.7 ― 7.21

白南風しらはえが運ぶ夏

「小暑」とは本格的に暑くなる少し前の季節。
この時季は海から「白南風」と呼ばれる
南風が吹きはじめ、気温が上昇します。
小暑と次の大暑を合わせたひと月を暑中といい、
これが暑中見舞いを出す期間です。
進みゆく夏、どんなひとときを過ごされるでしょう
か。

仰ぐ星に、水辺の蓮に、
想いをこめて。

七月七日は七夕の節句です。
地域によっては旧暦の八月七日に七夕まつりが行われます。
その起源は古代中国、牽牛星(けんぎゅうせい)と織女星(しょくじょせい)が年に一度天の川で出会う伝説と、機織りや習字などの上達を願う乞巧奠(きっこうでん)という儀礼が融合されたものとされています。
日本では奈良時代に宮中ではじまり、短冊に願いごとを書いて飾る風習は
江戸時代に広まったそうです。
思えば子どもの頃、どんな願いを書いたのか。
大人になった今、星に何を願うでしょうか。 

小暑の次候は「蓮始開(はすはじめてひらく)」。
暑さが増すこの頃、日の出とともにゆっくりと花開く蓮は神秘そのもの。
まさに極楽浄土の世界を感じさせます。
「泥より出でて泥に染まらず」。
そのさまは泥水から生まれ育ったものとは
想像がつかない高貴さと清浄さに満ちています。
江戸時代の人々はその姿を見ようと、
早朝の「蓮見」のひとときを愉しんだそうです。
現代に残したい風習がここにもありました。

南風の色は、心の色。

日本の夏に吹く季節風は、梅雨の時期によってその呼び方が変わります。
梅雨のはじまりは「黒南風(くろはえ)」、半ばは「荒南風(あらはえ)」、
そして終わりの今頃は「白南風(しらはえ)」。
これはその時期の雲や風のさまを表したものですが、
もしや、風を受ける私たちの気分も表しているのかもしれません。
もうすぐ梅雨明け。
心が明るく輝き、夏の盛りを楽しみにする。
今、南の海からそんな色の風が吹いています。

小暑の半ば、七月二十一日は海の日です。
海開きもこの頃ですから、海に親しむ日と思っていましたが、
「海の恩恵に感謝し、海洋国日本の繁栄を願う」日なのだそうです。
言われてみれば、まさに私たちは海に囲まれ、
海の恩恵を大いに受けて暮らしていますね。
夏休み、海で遊びに興じるのもいいですが、
漂う波をただ見つめ、のんびりと海を感じるひとときを愉しむのも
いいかもしれません。

時代を越え、
今も漂い続ける青海波の模様。

自然に寄せる想いは、ずっとむかしから人々の心の中にありました。
海の荒さに畏怖し、無限の大いなる存在を崇め、そこに生きるものとして親しむ。
そんな存在の海を、古代の人々は 模様にしました。
それは遠くペルシアからシルクロードを経て、日本には飛鳥時代に伝わったとされています。
波のうねりを表す半円の連なりを描いた「青海波」模様。
日本の長い歴史の中で使われてきたこの模様も、印傳屋は代々たいせつに受け継いでいます。

「青海波」模様の印伝

札入C[紺地/白漆 ]
12,100円(税込)
束入Y[紺地/白漆]
31,900円(税込)
名刺入C[紺地/白漆 ]
9,460円(税込)
合切袋(大)マチ付[紺地/白漆 ]
24,200円(税込)
巾着[紺地/白漆 ]
6,380円(税込)
キーケースB[紺地/白漆]
5,500円(税込)

「青海波」模様の印伝は、形や色の組み合わせがさまざま。オンラインショップで取り扱いのない商品については、印傳屋直営店へお問い合わせください。

季の訪い
季の訪い

頰を撫でるそよ風に、
ふと見た野辺の草花に、季節を知る。
あめつちの間で、ひとは千年以上も前から
季の趣を細やかにとらえ、
風物や自然の恵みを愛おしんできました。
一日一日を過ごす時の流れは、
むかしほど緩やかではない
かもしれませんが、
その感性は今も誰の心にもあるものです。

季節の移ろいと、そこに寄り添い
生きてきた
日本の暮らしと文化をなぞり、
日本人のひとつの感性として
生み出してきた印伝とともに
二十四の季をみなさまと
めぐってまいりたいと思います。