Ki-No-Otonai

vol.19

立冬

Rittō

2024.11.7 ― 11.21

立つ冬の、
自然と人の営み

暦の上ではこの日から冬。
木々が落葉し、次第に冬枯れしていく景色の中で
感傷にひたる心を、石蕗(つわぶき)が
ぽっと黄色く染めてくれます。
冬のお出迎えを愛おしく感じる今日この頃です。

冬へと進む
景色も心もさまざま。

秋から冬へと変わるこの季節、西高東低の気圧配置となり北寄りの強い風「木枯らし」が吹きます。
東京や近畿地方でその年最初に観測されたものが木枯らし1号。
その報を聞くと、これからやってくる本格的な寒さへの対策をしなければと思うのですが、霜月といえども陽が出れば「小春日和」の暖かな日もちらほらと。
厳しい冬に入るのですから、そうして秋の穏やかな日の名残惜しさを少しでも汲んでもらえるのはありがたいことですね。

ただ確実に朝の冷え込みは進んでいくもの。
初冬になると寒さの備えとして、苔を植えた寺院や庭園などでは「敷松葉」が見られます。
霜が降りて地面が持ち上がると苔が剥がれるので、それを防ぐために乾燥した松葉を露地一面に敷き詰めておくのです。
先人の知恵が生んだ冬支度。枯れ色の装いは、この時季だけの侘びの風情をもたらしてくれます。

無病息災、
開運招福を願う
日本の初冬の行事。

旧暦十月は亥(い)の月。
その最初の亥の日には「亥の子」という行事が行われます。
これは古代中国の無病息災を願う宮廷儀式に由来するもので、新穀の入った「亥の子餅」を食べると病気にならないとされています。
日本には平安時代に伝わり、宮中行事として貴族の間に広まりました。
やがて庶民の間で収穫祭と結びついたり、多産の猪にあやかり子孫繁栄や子どもの成長を願う祭として主に西日本の地域に広まりました。

豊国『十二月ノ内 霜月酉のまち』,蔦屋吉蔵,嘉永7年.
(一部を表示)
出典:国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/1307021/1/1

十一月の酉の日には、関東を中心とした鷲や鳥にゆかりがある神社で開運招福、商売繁盛を願う「酉の市」が開かれます。
今年一年の無事の報告と翌年の幸福を祈願したら、市で名物の熊手を購入するのがお決まり。
熊手には運をかき込めるようにさまざまな招福の飾りが施され、おかめは「お多福」、鯛は「おめでたい」、矢は「当たる」など、江戸っ子らしい洒落が利いているものも。
江戸時代から続く酉の市は、年の瀬を控えた十一月の賑やかな風物詩として今も続いています。

縁起を大事にする文化を
未来へ。

縁起をかつぐのが好きなこの国の人々。
衣服や持ち物に施す模様にはおめでたいものを取り入れてきました。
「輪繋ぎ」もそんな模様のひとつ。輪の繋がりは「和」や「縁」が永遠に続くことを願ったもの。
単なる和のデザインとしてではなく、模様に込められたこの国の人々の願いも現代へ、そして未来へ繋げていきたい。
その想いで印傳屋は模様を重ねた印伝をつくり続けています。

「輪繋ぎ」模様の印伝

F小銭入12[紺地/黒漆]
SOLD OUT
72H小銭入[黒地/黒漆]
SOLD OUT
小銭入A[黒地/黒漆]
2,310円(税込)
340親子がま口[黒地/黒漆]
9,130円(税込)
105丸がま札[黒地/黒漆]
18,700円(税込)
束入Z[黒地/黒漆]
28,050円(税込)
束入F[紺地/黒漆]
26,400円(税込)
札入K[黒地/黒漆]
19,800円(税込)

「輪繋ぎ」模様の印伝は、形や色の組み合わせがさまざま。上記以外の商品については、印傳屋直営店へお問い合わせください。

季の訪い
季の訪い

頰を撫でるそよ風に、
ふと見た野辺の草花に、季節を知る。
あめつちの間で、ひとは千年以上も前から
季の趣を細やかにとらえ、
風物や自然の恵みを愛おしんできました。
一日一日を過ごす時の流れは、
むかしほど緩やかではない
かもしれませんが、
その感性は今も誰の心にもあるものです。

季節の移ろいと、そこに寄り添い
生きてきた
日本の暮らしと文化をなぞり、
日本人のひとつの感性として
生み出してきた印伝とともに
二十四の季をみなさまと
めぐってまいりたいと思います。