Ki-No-Otonai

vol.19

立冬

Rittō

2025.11.7 ― 11.21

立つ冬の、
自然と人の営み

暦の上ではこの日から冬。
木々が落葉し、次第に冬枯れしていく景色の中で
感傷にひたる心を、
石蕗(つわぶき)が
ぽっと黄色く染めてくれます。
冬のお出迎えを愛おしく感じる今日この頃です。

冬へと進む
景色も心もさまざま。

秋から冬へと変わるこの季節、西高東低の気圧配置となり
北寄りの強い風「木枯らし」が吹きます。
東京や近畿地方でその年最初に観測されたものが木枯らし1号。
その報を聞くと、これからやってくる
本格的な寒さへの対策をしなければと思うのですが、霜月といえども陽が出れば「小春日和」の暖かな日もちらほらと。
厳しい冬に入るのですから、そうして秋の穏やかな日の名残惜しさを
少しでも汲んでもらえるのはありがたいことですね。

立冬といえども、まだ季節の感覚は秋。
ただ近頃は夏の強い勢いに秋が押され、
気づけばあっという間に年の瀬が見えてきたり。
むかしよりも秋を愉しむ日が
だんだん短くなっているのを感じます。
紅葉が遅れる年がずっと定着してしまうと
平年の感覚も、日本の歳時記も変わっていくのでしょうか。
不自然に思うも、木々は黙って受け入れるだけです。

『椿花一束』
(一部を表示)出典:国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/2533676/1/7

火伏せを祈り、
開運招福を願う
日本の初冬の行事。

茶道の世界では旧暦十月の亥(い)の月、
現在の十一月の最初の亥の日に炉開きが行われます。
炉はお茶を点てるためのお湯を沸かす囲炉裏のこと。
五月から十月まで風炉の間は畳にしまっておきますが
この亥の日に炉を開き、これから使用する無事を祈り、
その年の新茶をいただきます。
十一月は茶人の正月ともいわれ、
おめでたいそのひとときをそっと寿ぐような清々しい椿が
この頃の茶花の主役だそうです。

豊国『十二月ノ内 霜月酉のまち』,蔦屋吉蔵,嘉永7年.
(一部を表示)
出典:国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/1307021/1/1

十一月の酉の日には、関東を中心とした鷲や鳥にゆかりがある神社で
開運招福、商売繁盛を願う「酉の市」が開かれます。
今年一年の無事の報告と翌年の幸福を祈願したら、
市で名物の熊手を購入するのがお決まり。
熊手には運をかき込めるようにさまざまな招福の飾りが施され、
おかめは「お多福」、鯛は「おめでたい」、矢は「当たる」など、
江戸っ子らしい洒落が利いているものも。
江戸時代から続く酉の市は、
年の瀬を控えた十一月の賑やかな風物詩として今も続いています。

縁起を大事にする文化を
未来へ。

縁起をかつぐのが好きなこの国の人々。
衣服や持ち物に施す模様にはおめでたいものを取り入れてきました。
「輪繋ぎ」もそんな模様のひとつ。輪の繋がりは「和」や「縁」が永遠に続くことを願ったもの。
単なる和のデザインとしてではなく、模様に込められたこの国の人々の願いも現代へ、そして未来へ繋げていきたい。
その想いで印傳屋は模様を重ねた印伝をつくり続けています。

「輪繋ぎ」模様の印伝

小銭入A[黒地/黒漆]
2,310円(税込)
札入A[紺地/黒漆]
25,300円(税込)
札入K[黒地/黒漆]
19,800円(税込)
束入F[紺地/黒漆]
26,400円(税込)
325印鑑入[黒地/黒漆]
2,310円(税込)
5ポシェット[紫地/黒漆]
34,100円(税込)

「輪繋ぎ」模様の印伝は、形や色の組み合わせがさまざま。オンラインショップで取り扱いのない商品については、印傳屋直営店へお問い合わせください。

季の訪い
季の訪い

頰を撫でるそよ風に、
ふと見た野辺の草花に、季節を知る。
あめつちの間で、ひとは千年以上も前から
季の趣を細やかにとらえ、
風物や自然の恵みを愛おしんできました。
一日一日を過ごす時の流れは、
むかしほど緩やかではない
かもしれませんが、
その感性は今も誰の心にもあるものです。

季節の移ろいと、そこに寄り添い
生きてきた
日本の暮らしと文化をなぞり、
日本人のひとつの感性として
生み出してきた印伝とともに
二十四の季をみなさまと
めぐってまいりたいと思います。