Ki-No-Otonai

vol.17

寒露

Kanro

2024.10.8 ― 10.22

そこかしこに秋の知らせ

日増しに秋の深まりを感じるようになりました。
ひと月前の「白露」の頃は、
朝露の輝きが爽やかでしたが
「寒露」になると夜の気温がさらに下がり、
早朝の草露が少し寒々しく感じられるように。
秋深まる足音が、そこかしこに聞こえてきます。

秋の深まりを知らせる声。

寒露の初候は「鴻雁来(こうがんきたる)」といい、雁が北方から渡ってくる時期。
この頃に吹く北風を漁師や船乗りは「雁渡し(かりわたし)」と呼んでいました。
現在も秋の季語として使われる言葉です。雁の到来は秋のしるし。
「雁がねの寒く鳴きしゆ水茎の 岡の葛葉は色づきにけり」とは万葉集に収められた一句。
雁の鳴き声に呼応するように葛の葉が色づいてきたと、秋の到来をしみじみと詠んだものです。

身のまわりでは、虫たちが秋の深まりを知らせてくれていますね。
寒露の末候は「蟋蟀在戸(きりぎりすとにあり)」。
蟋蟀はコオロギの古名で秋に鳴く虫の総称です。
夏の終わりからコオロギが野原で鳴き始め、夜冷えるにつれあたたかい場所を求め家にまでやってくる、そんな頃を表した七十二候です。
むかしの人は秋になると日暮れに野山へ「虫聞き」に行きました。
夜桜見物や月見をするように、その季節ならではの自然の味わいに浸っていたのでしょう。
今宵も、秋の声が聞きたくなりました。

富士が雪を纏う頃。

秋も深まりはじめ、富士山から初冠雪の知らせが届く頃です。
富士の麓、甲州の地でその高嶺を仰ぎ見てきた私たちは、どの季節の富士もそれぞれ趣があってよいと思うのですが、やはり雪を頂いた姿がその山容を優美に見せてくれるものと感じています。
晩秋へ、そして冬へ。
次第に雪の衣を重ね着し、白銀の富士が輝きはじめます。

豊國 筆『名勝八景』富士暮雪,伊勢屋利兵衛,天保頃. (一部を表示)
出典:国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/11299479/1/1

富士は神代のむかしから人々に畏怖され、霊峰として日本の永い歴史の中で神聖視されてきました。
江戸時代には「富士を拝み、富士山霊に帰依し心願を唱え、報恩感謝する」という教えが特に江戸を中心とした関東で広まり、多くの人々が富士講として参詣。
その熱は絵師たちの題材となり、さまざまなテーマで描かれました。
そうして富士の浮世絵は異国の人の目にとまり、日本の象徴として知られるようになります。

甲州から仰ぎ見た
富士の高嶺を印伝に。

歌や物語、絵画などさまざまな芸術に表された富士。
天正十年に創業し、富士の麓で歩んできた印傳屋にも、富士には特別な想いがあります。
自分たちにしかできないやり方で富士を表現できないか。
その想いでつくりあげたのが、富士の高嶺を模様にした印伝です。
漆の色の違いで白富士、赤富士、黒富士の三種類。黒富士の漆に光が照り輝くさまは、秋に雪を戴きはじめた姿に見えます。

「たかね」模様の印伝

F小銭入02[黒地/黒漆]
2,970円(税込)
小銭入G[黒地/白漆]
9,570円(税込)
札入J[黒地/赤漆]
17,050円(税込)
名刺入 [黒地/黒漆]
8,910円(税込)
パス入F[黒地/白漆]
5,060円(税込)
325印鑑入[黒地/赤漆]
2,750円(税込)
キーケース[黒地/黒漆]
3,960円(税込)
束入M[黒地/白漆]
25,300円(税込)
束入L[黒地/赤漆]
9,570円(税込)
束入F[黒地/黒漆]
30,800円(税込)
合切袋(大)マチ付[黒地/白漆]
28,050円(税込)
Hメガネケース[黒地/赤漆]
10,230円(税込)

たかねは甲州の地で仰ぎ見る、富士への畏敬の念を込めて作った印伝です。漆の色によって異なる富士の表情を是非お手に取ってご覧ください。

季の訪い
季の訪い

頰を撫でるそよ風に、
ふと見た野辺の草花に、季節を知る。
あめつちの間で、ひとは千年以上も前から
季の趣を細やかにとらえ、
風物や自然の恵みを愛おしんできました。
一日一日を過ごす時の流れは、
むかしほど緩やかではない
かもしれませんが、
その感性は今も誰の心にもあるものです。

季節の移ろいと、そこに寄り添い
生きてきた
日本の暮らしと文化をなぞり、
日本人のひとつの感性として
生み出してきた印伝とともに
二十四の季をみなさまと
めぐってまいりたいと思います。