Ki-No-Otonai

vol.20

小雪

Shōsetsu

2024.11.22 ― 12.6

季節を知らせる葉

北国や山地からは、
そろそろ初雪の知らせが届く頃。
「小雪(しょうせつ)」とは、
積もるほど多くは降らないという意味で
雪よりもまだまだ木の葉が舞う季節です。
未だ残る木立の葉に、
秋の名残惜しさが感じられます。

初冬に抱く
感謝の心、愛おしむ心。

農耕が生活の中心であったいにしえの時代から、人々は豊作を祈り、収穫に感謝することを続けてきました。
稲などの収穫も終えた十一月二十三日、全国の神社では新嘗祭(にいなめさい)が執り行われます。
宮中では収穫された新穀を天皇陛下が神に奉り、御自らその新穀をお召し上がりになります。
この日は勤労感謝の日。家族や身近な人に対してだけでなく、豊かな恵みをもたらす自然と、農耕に従事する人々にも感謝の心を捧げたいと思います。

七十二候では、小雪の次候を「朔風払葉(きたかぜこのはをはらう)」といいます。
北風が木の葉を吹く音を時雨に見立てたのが、「木の葉時雨」という冬の季語。
そんな情景に出会ったら、ぜひ降られてみたいものです。
秋の終わりを告げる木の葉たちのささやきを風とともに一身に浴び、冬のはじまりを聞く。
その音を探しに外を歩いてみたくなりました。

杉の葉に、
酒造りの感謝と祈念を込める。

十一月は酒蔵が新酒を仕込みはじめる時期。
早いところでは新酒が完成する十二月に「杉玉」を飾りかえるところもあります。
杉玉の由来は、そのむかし酒造りの神様が祀られる大和国の大神(おおみわ)神社を参拝した蔵人が、御神体である三輪山の杉の葉をお守りとして持ち帰ったことにはじまります。
江戸時代には杉を丸い形に整えて飾り、無事に酒造りができることを祈念する今のような風習がはじまりました。

実は、杉は日本の固有種なのだそうです。
本州から九州まで広く分布し、 有史以前から日本人は身近な杉を暮らしに利用してきました。
建物や家具、道具の材として利用したほか、葉は抗菌作用があることから料理の“つま”にしたり、油分を含むことから火の焚き付けにも用いてきました。
他にも杉の葉は、線香やお香の材料に使われることもあるようです。
素材を知り尽くし、その特性を活かす先人の知恵と技は、今に受け継がれています。

日本ならではの呼び名
「杉綾」。

杉の葉のような山の形の連続模様は古くから使用されており、日本では「杉綾」、西洋ではニシンの骨の形を指して「ヘリンボーン」と呼ばれます。
織物の形態から派生した杉綾の模様は、杉が日本だけのものであることから、印傳屋はこの国の伝統の模様とともに、印伝に取り入れています。

「杉綾」模様の印伝

121H小銭入[赤地/赤漆]
4,290円(税込)
340親子がま口[赤地/赤漆]
9,130円(税込)
札入J[黒地/グレー漆]
SOLD OUT
札入F[黒地/グレー漆]
18,150円(税込)
230合切袋マチ付[黒地/黒漆]
30,800円(税込)
スマホポシェット[黒地/黒漆]
15,400円(税込)

「杉綾」模様の印伝は、形や色の組み合わせがさまざま。上記以外の商品については、印傳屋直営店へお問い合わせください。

季の訪い
季の訪い

頰を撫でるそよ風に、
ふと見た野辺の草花に、季節を知る。
あめつちの間で、ひとは千年以上も前から
季の趣を細やかにとらえ、
風物や自然の恵みを愛おしんできました。
一日一日を過ごす時の流れは、
むかしほど緩やかではない
かもしれませんが、
その感性は今も誰の心にもあるものです。

季節の移ろいと、そこに寄り添い
生きてきた
日本の暮らしと文化をなぞり、
日本人のひとつの感性として
生み出してきた印伝とともに
二十四の季をみなさまと
めぐってまいりたいと思います。