Ki-No-Otonai

vol.16

秋分

Shūbun

2025.9.23 ― 10.7

季節の折り目に偲ぶこと、
感じること

秋分の日は、春分と同じように陽が真東から昇り、
真西に沈みます。
昼と夜の長さが同じになるこの日を境に、
だんだんと日は短くなり秋の夜長に。
暑さ寒さも彼岸までといいますが、
秋のお彼岸はこの秋分の頃のこと。
まわりの草木や空気に、
秋の深まりを感じるようになります。

感謝の想いを、
此の世から彼の世へ。

秋のお彼岸は、秋分の日を中日(ちゅうにち)とした七日間を指します。
お彼岸にお墓参りをする風習がありますが、
これは平安時代にはじまったそうです。仏教では先祖のいる世界を
「彼岸」と呼び、いま私たちが生きている世界を「此岸(しがん)」と呼びます。
昼夜の長さがほぼ同じになる秋分の日は、彼岸と此岸の距離が最も近くなり、
先祖を敬い感謝する気持ちを表しやすいとされました。
その習わしを大切にするために、日本では国民の祝日に定められています。

秋のお彼岸といえば、おはぎをお供えしていただくのが楽しみでもあります。
餅米と米、小豆あんで作る同じ食べ物でも、時季に咲く花にたとえて、
春のお彼岸では「牡丹餅」、秋は「御萩」と呼ばれています。
地域によっては、大きさ、つぶあんとこしあん、餅米の種類など
春秋で違いがあるところもあるようですが、一般的には同じ食べ物。
季節によって呼びかたを変えるとは、なんとも日本人らしい風習ではないでしょうか。

秋の訪いを告げるものたち。

七草といえば「春の七草」が想起されますが、秋にも七草はあります。
萩、尾花、葛、撫子、女郎花(おみなえし)、藤袴、桔梗です。
尾花とはススキのこと。
他の六つは色合い豊かな可憐な花弁をもち、
ススキだけが地味な花穂ですが、それでも秋の二番手につけています。
万葉集にはススキの穂を推す歌もあり、清少納言も秋の最高の情緒と礼賛しています。
時代は変わっても、秋の野を心に描けば、やはりススキが風に揺れていることでしょう。

あの甘く華やかな香りを、もう感じたでしょうか。
秋分は金木犀(きんもくせい)が花をつける季節です。
春の沈丁花(じんちょうげ)、夏の梔子(くちなし)とともに
三大香木のひとつに数えられ、その芳香は九里先まで届くことから
「九里香」(きゅうりこう)の異名をもちます。
橙色の小花を咲かせるのは一週間ほど。
このわずかな間、秋を告げてくれる金木犀の香りを心ゆくまで愉しみたいものです。

これも、
もはや日本の秋の模様。

コスモスも秋分の頃に見られる花です。
野原で風に揺れる姿を見るとどこか郷愁を感じます。
それも、明治時代に文部省が全国の小学校にコスモスの種を配布したからだとか。
思えば学校の校庭で見た記憶も。
だから西洋の花なのに、日本人にとってはどこか懐かしさを感じるのですね。
「秋桜」という字をあてたこともあり、もはや日本の花のよう。
そんなコスモスも、印傳屋では秋の風物詩として印伝の模様に取り入れています。

「コスモス」模様の印伝

50H小銭入[紺地/白漆]
2,640円(税込)
札入E[紺地/白漆]
18,150円(税込)
札入Q[紺地/白漆]
19,250円(税込)
ミニ巾着[黒地/ピンク漆]
1,870円(税込)
Hメガネケース[黒地/ピンク漆]
8,800円(税込)
69ハンドバッグ[黒地/白漆]
46,200円(税込)

「コスモス」模様の印伝は、形や色の組み合わせがさまざま。オンラインショップで取り扱いのない商品については、印傳屋直営店へお問い合わせください。

季の訪い
季の訪い

頰を撫でるそよ風に、
ふと見た野辺の草花に、季節を知る。
あめつちの間で、ひとは千年以上も前から
季の趣を細やかにとらえ、
風物や自然の恵みを愛おしんできました。
一日一日を過ごす時の流れは、
むかしほど緩やかではない
かもしれませんが、
その感性は今も誰の心にもあるものです。

季節の移ろいと、そこに寄り添い
生きてきた
日本の暮らしと文化をなぞり、
日本人のひとつの感性として
生み出してきた印伝とともに
二十四の季をみなさまと
めぐってまいりたいと思います。