水田は若い緑に、
梅の実は黄に。
芒種の「芒」は「のぎ」と読み、
イネ科植物の穂先にある細い毛のような部分のことで、
芒種は稲などの穀物の種をまく時季です。
古くから田植えの目安とされ、農家さんが忙しくなる頃。
各地で豊作を田の神様に祈る祭りも開催されます。
Ki-No-Otonai
vol.9
Bōshu
2024.6.5 ― 6.20
爽やかな空の青が、
次第に灰色になる日が増えてきました。
梅雨入りを迎えると、
心までどんよりとしてしまいます。
それでも、季節がちゃんと進んでいるのだと
思って、
「芒種」の雨の風情を
愉しんでみたいものです。
芒種の「芒」は「のぎ」と読み、
イネ科植物の穂先にある細い毛のような部分のことで、
芒種は稲などの穀物の種をまく時季です。
古くから田植えの目安とされ、農家さんが忙しくなる頃。
各地で豊作を田の神様に祈る祭りも開催されます。
芒種も末の候、七十二候では「梅子黄(うめのみきばむ)」といい、
雨の恵みを受け青葉が茂るなか、梅の実が熟し黄色みを帯びてきます。
「梅雨」という言葉も、梅の実が熟す頃の雨という意味。
雨はただ心を暗くするのではなく、
自然の生命に潤いを与えているのだと梅の彩りを見てあらためて思いました。
梅雨時の日々を彩るのは、なんといっても紫陽花。
家々の庭木に見られ、場所によって青、紫、ピンクと
さまざまな色合いと濃淡で愉しませてくれます。
晴れ間でももちろん綺麗なのですが、
紫陽花は雨露にしっとりと濡れた時こそ美しいと思うのです。
お寺や神社の植栽にも紫陽花はよく見られます。
近年は花手水(ちょうず)にして参拝客を愉しませてくれるところが多くなってきました。
手水舎の水面に浮かぶ色とりどりの紫陽花は、
見る人の心を清涼にし、癒しをもたらしてくれます。
これも芒種の歳時記に加わっていくのでしょう。
紫陽花は万葉集で詠まれたほど、いにしえより親しまれてきた花。
江戸時代には、花の少ない梅雨時に咲く花として庶民に親しまれました。
暗い雨雲に囲まれるなかで輝くちいさな希望。
そんな心の雲間に彩りを添えてくれる紫陽花を、
印傳屋は日本の残し伝えたい風月の模様として印伝に取り入れています。
「紫陽花」模様の印伝は、形や色の組み合わせがさまざま。上記以外の商品については、印傳屋直営店へお問い合わせください。
頰を撫でるそよ風に、
ふと見た野辺の草花に、季節を知る。
あめつちの間で、ひとは千年以上も前から
季の趣を細やかにとらえ、
風物や自然の恵みを愛おしんできました。
一日一日を過ごす時の流れは、
むかしほど緩やかではない
かもしれませんが、
その感性は今も誰の心にもあるものです。
季節の移ろいと、そこに寄り添い
生きてきた
日本の暮らしと文化をなぞり、
日本人のひとつの感性として
生み出してきた印伝とともに
二十四の季をみなさまと
めぐってまいりたいと思います。