黄金色の麦と蒼の風に
季節を知る。
今は麦の穂が実る頃。秋に蒔いた麦が無事に実り、
ほっとひと安心することから
小さな満足「小満」となったともいわれています。
七十二候では小満の末候も「麦秋至(むぎのときいたる)」。
初夏のこの時季を「麦秋」「麦の秋」ともいいますね。
「秋」というのは収穫を迎えるときを意味します。
青々とした草木が茂るなか、一足先に色づく麦畑の黄金色が際立ちを見せます。
Ki-No-Otonai
vol.8
Shōman
2024.5.20 ― 6.4
「小満(しょうまん)」とは
草木の枝葉が茂り、
天地に緑が満ちはじめる時季のこと。
伸びゆく植物のあふれる精気が
人を揺り動かし、
初夏の訪れを告げてくれます。
今は麦の穂が実る頃。秋に蒔いた麦が無事に実り、
ほっとひと安心することから
小さな満足「小満」となったともいわれています。
七十二候では小満の末候も「麦秋至(むぎのときいたる)」。
初夏のこの時季を「麦秋」「麦の秋」ともいいますね。
「秋」というのは収穫を迎えるときを意味します。
青々とした草木が茂るなか、一足先に色づく麦畑の黄金色が際立ちを見せます。
青葉が輝く頃、木々を揺らすやや強い風「青嵐(あおあらし)」が吹きます。
それは、伸びゆく植物の精気が呼び起こすものなのか、
天地が植物に力を与える余波なのか。
いずれにしても蒼い風は多少強くとも、
爽やかに感じられることでしょう。
その風が、春までの服を吹き剥がし、夏への更衣(ころもがえ)を促します。
初夏から仲夏へ。
季節はまた一歩、進んでゆきます。
大地に緑が満ちてくるのと同時に陽射しも増し、
夏を思わせる日もしばしば。
近頃は夏の到来が早まってきているのを感じます。
野山を歩けば、さまざまな草花が咲くなかでも、
梔子(くちなし)や空木(うつぎ)、山法師(やまぼうし)、アガパンサス(紫君子蘭)などの花ひらく姿と色合いは実に涼しげで、
早くも汗ばんだ身体と心を和ませてくれます。
クレマチスも初夏の風情を伝えてくれるもの。
涼しげな趣が好まれたのか、江戸時代には園芸品種が多数つくられたそうです。
和名では「カザグルマ」「テッセン」などと呼ばれています。
江戸時代後期の絵師川原慶賀は、長崎に来日したシーボルトの求めに応じカザグルマなど日本のさまざまな植物や文化を描きました。
それらの図譜はシーボルトがヨーロッパに多数持ち帰り、
遠い極東の島国の文化を伝える貴重な資料となりました。
シーボルトは、日本のカザグルマや中国のテッセンなどもヨーロッパに伝えています。
そこからヨーロッパにもともとあったクレマチスの品種と交配が行われ、数多くの品種が誕生し、世界中に広まっていきました。
言われてみれば、いま日本に広まるクレマチスは、どこか和のようでもあり洋の雰囲気でもあるようなものがさまざま。
クレマチス模様の印伝を手にする方は、どのように感じるでしょうか。
「クレマチス」模様の印伝は、形や色の組み合わせがさまざま。上記以外の商品については、印傳屋直営店へお問い合わせください。
頰を撫でるそよ風に、
ふと見た野辺の草花に、季節を知る。
あめつちの間で、ひとは千年以上も前から
季の趣を細やかにとらえ、
風物や自然の恵みを愛おしんできました。
一日一日を過ごす時の流れは、
むかしほど緩やかではない
かもしれませんが、
その感性は今も誰の心にもあるものです。
季節の移ろいと、そこに寄り添い
生きてきた
日本の暮らしと文化をなぞり、
日本人のひとつの感性として
生み出してきた印伝とともに
二十四の季をみなさまと
めぐってまいりたいと思います。